シャンボール城と、入ってきたばかりのルネサンス(2/3)




此の頃のロワールのお城には、ルネサンスと土着の様式が入り混じっています。


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シャンボール城で言いますと、 まず周縁部に塔を配置するのは、それまでフランスにあったお城の建て方の伝統です。 また急勾配のスレート屋根は、お城に限らずフランス建築に前からあった土着の伝統です (この地方では、良質のスレートが作られていました)。 しかし、全体の配置が左右対称になっているのは、それまでにないルネサンス建築の影響です。 その為にこのお城は非常に整った感じに見えます。上の写真を見るとよく分かりますね。


あのやたらと立っている屋根の上の小塔群はどうかと言うと、あれは、全くこのお城独特のものです。 小塔と言ってもエントツだったり採光・通風の為の塔だったり階段だったりするのですが、 とにかく、やたらとそういうもので屋根・テラスを覆い尽くそうという明確な意図が感じられます。 で、その細部を見ますと、確かにルネサンス(イタリア)のデザインの影響が非常に大きいのですが、 「ルネサンス様式」ではないのです。


つまりですね、それぞれの小塔のデザインがルネサンス(イタリア)っぽく見えるとしてもです、 あんな風に小塔を立てまくるという事自体はイタリア式でも何でもありません。 ルネサンス様式の中にそんなやり方はありません。 小塔にしたって、 ルネサンス様式の建物(当時の最新のイタリアの建物) の中にいかにもありそうな意匠(デザイン)要素を、 要素として、あるいはイメージとして引っ張ってきているだけで、 あくまで「要素」の寄せ集めです。


当時のフランス人にしてみれば、「どうだ、イタリア趣味にしたぞ」というところかもしれません。 しかしそれはフランス人からみての話です。 建物を分析する立場から言いますと、 あんな塔状のもので屋根を埋め尽くしたいという発想自体は、 ルネサンスとは全く別のところから来ているとしか考えられません。 このお話の続きはもう少し後でいたしましょう。


さて、では他にこの建物の何がルネサンスなのか?。 下の写真にちょっとだけ写っていますが、中庭に面して ルネサンス様式のオーダー(古代ローマ建築に使われた装飾柱)を模した付け柱 (壁にくっついていて、壁からボコッとでた柱のようなもの)が立っています。 しかし何といっても、摩訶不思議なのは小塔のデザインですね。


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林立する小塔を見てみましょう。 立っている塔の多くに、古代ギリシャのオーダーのようなものが付いた装飾柱が見られます。 これはイタリアのルネサンス建築から来たものです。 また模様として多くのひし形、四角、丸などがあって、 それらは当時のイタリア建築の表面に見られる大理石の装飾模様を模したと思われます。 つまり、コテコテのイタリア(ルネサンス)趣味といえます。


ところで面白いのは下右の写真に見える柱頭です。 一応オーダーのような形をしているのですが、あろうことか、この柱頭に居るのは変な怪物です。 この手の怪物は、ゴシック建築によく付いている守り神の化け物 (ガーゴイル)から来たのではないでしょうか。 ゴシック教会の屋根の端に変な怪物が居るのは、皆さんもどこかで見覚えがあるでしょう。


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続く−−→